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私のイラスト(FFとか、BLEACH、Pandora Heartsが主)や 歌詞(アニソン)もがんがん貼っていきたいと思いますww
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路地裏に広がる鉄の匂い。
流れ出す赤い液体。
なまめかしい音と悲痛な叫び声。
そこはもう、廃墟と化していた。
壁に描かれた文字さえも赤黒く、夜の月に照らされている。
そこには一言だけ。
『CRONUS』
 
「神にでもなったつもりか?」
男は血塗られた壁をザラリと撫で、そう呟いた。
「ギリシャの神、クロノス。神話の中ではあまり良い印象は与えてはいないが…。」
男は、しゃがみ込むとその場に落ちていた何かを見つめる。
「父、ウラノスを倒し、つかの間の英雄となったが、最終的にはまた自らの子を飲み込む始末。…全く手に負えん。」
漆黒のコートを翻して、男は路地裏からゆっくりと歩いて出て行った。
 
残されたのは、たった一枚のカード。
『Ⅶ』
先ほどの男が見つめていたものは、これだったのだ。
 
「おーい。ヴィンスー。カードどこやったんだよー?」
「置いてきた。」
「置いてきたぁ!?なに考えてんだよ!!あれないと、ヤードに報告しても取り合ってくれねぇよ!」
茶髪の男が黒髪の男に噛みつくように言った。
黒髪の男は昨日路地裏で死体を前に立っていた男だ。
「ヤードに手柄を横取りされるのが嫌だったんだ。」
「じゃあ置いてくるな!!」
ヴィンスと呼ばれた黒髪の男は茶髪の男から目をそらした。
明らかに五月蠅いなぁとでも言いたげだ。
「そんなに欲しいんだったら、お前が取ってくればいいだろう?クロト。」
茶髪の男、クロトはぎろりとヴィンスを睨むと言い放った。
「もうヤードに見つかっちまったよ!!俺の仕事が全部水の泡だよ!!どうしてくれんだ、コノヤロー!!」
すると、クロトは頭を抱えて座っていた椅子にうずくまってしまったのだった。
 
彼らの仕事は、死者の弔い。
そのための死亡時の捜査。
死者を弔うためには、まず、その人物がどのように死んだか。
それを知る必要がある。
そしてその者たちを、その人物に見合った場所へと連れて行くのだ。
つまりは、死神というわけだ。
 
そして、ヴィンスとクロトがいるのは、他殺されてしまった人物の取り締まりを行う部署。
主な仕事は弔いよりも、殺人現場の捜査だった。
敵は、人間のヤードたち。
彼らに、必要な証拠品をかすめられたら、もうどうしようもない。
しかし、こちらが証拠品を握ってしまえば、ヤードの協力すらあおぐことが出来るというわけだ。
 
そして、今回の重要な証拠品だったのが『Ⅶ』と書かれたカードだったのだ。
「そんな大事なものをよくも置いてきてくれたな…。」
「あんなもの、必要ない。ただの数字の書かれたカードにすぎん。」
ヴィンスはあくまでも冷静に言う。
「困るんだよ!!今までのこの殺人事件で落ちていたカードには規則性が無いんだ!!Ⅵがまだ何なのかわからない以上、持ち帰ってくるのは当たり前だろ!?」
「覚えればいいんだ。あんなもの。最初が6、次が37、その次が8、そして7だ。」
「全く法則性がつかめないじゃないか!どうなっているんだ!!」
クロトは、あー!!っと叫ぶと、自分の足に顔を埋めた。
「癇癪をおこすな。俺はもうすぐ分かりそうだ。」
「は?」
ヴィンスはふんと鼻で笑うとカツカツと靴の音を部屋いっぱいに響かせながら歩き、言った。
 
「これは俺の憶測だが、残りの死者はあと二人。そしてカードの数字は92と16だ。」
ヴィンスは部屋から出ると、また再び夜の街に消えていった。
闇と同化するように。ゆっくりと。
黒衣をはためかせて。
 
「なんだよぅ。教えてくれたっていいじゃないかよー。」
クロトは悲しそうにヴィンスの背中を眺めていた。
 
数日後、ヴィンスはまた違う路地裏に立っていた。
足下には幼い子供の死体とカード。
壁には『CRONUS』。
「大当たりだな。やはり92だ。」
血濡れたカードには『Ⅸ Ⅱ』 と書かれている。
ヴィンスはカードを裏返し、なにやらカードの匂いを嗅いでいた。
「ヴィンスー。なにしてんのー。」
今回はクロトも同行している。
 
「やはりな。臭い。」
「当たり前だ。バカだ。お前は。」
クロトはヴィンスを見て溜め息をついた。しかし。
「違う。血の匂いが臭いとか、そういうことを言っているわけではない。薬品臭いんだ。」
「は?薬品?」
クロトも嫌々ながらカードの匂いをかぐ。
しかし、よくわからなかった。血の鉄のにおいの方が明らかに強い。
 
「わ、わからない…。」
「鼻が曲がってついてるんじゃないか?」
「そんなわけがあるかよ。」
クロトがヴィンスの背中につっこんだ。しかし、ヴィンスはこれといった反応を見せてはくれなかった。つまらない男だ。
 
「犯人が一人に特定できた。」
「へー。…え!?誰だ!?」
ヴィンスはカードを放り投げると、クロトを振り向いて言った。
 
「ユーリー氏。」
「え…。」
 
だれそれ。クロトがそう言う前にヴィンスが補足説明をし始めた。
「彼は化学者で、つい先日、生まれたばかりの自分の子を亡くしている。多分その腹いせだろう。身近な子供を手に掛けた。カードは、周期表の元素番号。それでCRONUSと順番にかかれていた。しかし、Rは元素番号にはないため、最初の文字がRのものを使ったというわけだ。」
「な、なるほど。」
明らかに納得仕切れていない顔でクロトが頷いた。
「まったく…。元素番号を使うなど、自分が犯人だと露呈しているようなものだ。この町で化学者はユーリー氏しかいないのだから。」
「そ…そーなのか。」
そして、ヴィンスは、クロトに向かって質問を投げかけた。
その時のヴィンスの目はあまり意欲的なものには見えなかったのだが。
「では、なぜ俺がカードの匂いを嗅いでいたかわかるか?」
それはさすがにわかる。とでもいいたげにクロトは胸を張って言った。
「化学者だってことを確認するためだ。」
すると、ヴィンスは一度流した目をもう一度戻して言った。
「それもあるが、この事件の犯人を特定するためだ。ユーリー氏が用いている薬品かどうかを調べていた。彼が使うのはこの土地にしか生息しない植物だ。それを使うのも彼しかいない。」
「お、おう。」
ヴィンスは持っていたカードを投げて、路地裏から出て行く。
クロトは一応それに従ってヴィンスについて行った。
 
「今からユーリー氏も捕らえに行く。彼も死亡者リストに載っている。…行くぞ。」
ヴィンスがそう言うと、クロトは軽く頷いて、
二人はまた再び闇の中に消えていったのだった。
 
Fin
 
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