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私のイラスト(FFとか、BLEACH、Pandora Heartsが主)や 歌詞(アニソン)もがんがん貼っていきたいと思いますww
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ブロ1「ただいまより、魔王撲滅会議を始める!はい、起立!気をつけぇ!礼!」
全員「お願いしまーす」
ブロ2「着席!えー、では早速本題に入りたいのだが、マゼンダ、クロウはどこに行った?」
マゼ1「クロウ君は後ろの御岩様の上で、金勘定してまーす」
ブロ3「なんだと!?」
クロ1「ふん。別に俺は魔王撲滅を、そこまで望んでいるわけでは無いのでな。」
ブル1「じゃあ、クロウはいいよ。そこで金勘定してれば?」
クロ2「……そんなに入ってほしいのなら、考えてやってもいいぞ」
テミ1「寂しんぼですねぇ…」

ブロ4「じゃあ、気を取り直して!我々はまたもや魔王軍に完敗した訳だが、何かここで新しい作戦を考えた者はいるか?」
ブル2「はい!!ジルバ君が、魔王と野球拳やって、魔王の防御力が落ち込んだスキに、リンチすればいいと思います。」
マゼ2「恐っ!!」
リン1「それは…ジルバがしまむらの生まれだから…?」
ジル1「何か話が進んでるとこ悪いけどね!?やらないからね!?そもそも俺、売られてないからね!?」
テミ2「はい!!隊長!!」
ブロ5「なんだ?」
テミ3「ジルバさんが、魔王に特攻すればいいと思います」
ジル2「なんで!?俺死んじゃうよ!!あっちの方が射程圏大きいんだから、寄っていった時点で雷で丸焦げだよ!?」
クロ3「だったら、そのけったいな鎧を脱げばいいだろうが」
マゼ3「そんなの着てるから、感電死するんだよ」
ジル3「やだよ!!鎧は体の一部だし!!」
リン2「それじゃあ、感電死すればいいヨ」
ジル4「うう…みんながいじめる…」
ブル3「もう諦めなよ、脱いじゃえば?」
ジル5「いや、それがな…俺、密着するのが嫌いなんだ」
リン3「それがどうしたのさ?」
ジル6「…つまり、俺下着着てないんだ。汗かいたときの下着の密着感が嫌で…」

(少しの間)

マゼ4「キャアア!!変態!!」
ブル4「うえぇえぇえ…。」
リン4&テミ4 「☆∈∑⊆…」
クロ4「おい、呪われてるぞ」
ブロ6「みんな、コイツはもうただの露出狂だ。逃げろ!!」
ジル7「えぇっ!!待って、みんな待ってくれぇ!!」

  完★
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わーい!!
きたぞきたぞ!!PandoraHeartsD!!V!!D!!
DVD♪DVD♪DVD♪DVD~~♪

これを見よ!!!


すってきー!!アリスかわいー!!
三人にキュンキュンしますー!!
はぅあーっっ!!

で、こちらがDVDさんですよー。


この表情がたまらないっすよ~♪
やっぱり破産しても買って良かったぁああ!!


初回限定版のトランプたちー!!
ダイヤのJがオズクン。
ダイヤのKがオスカーおっさんっす。
ちなみに裏返ってるのはダイヤの4です。
バックは朽木白哉さん。


デカくすると、こんな感じ。

また27日にPandoraHeartsの九巻が発売だから、
うっきうきでしょうがないです。
29日にはパンドララジオが発売です。
おぉ…。お金が飛んでゆく…。

そういえば、PandoraHeartsのきせかえツールが
手に入りました♪
新機種対応にしてくれたのでね。
とりましたよ。うはうはですよ。
ガンガンモバイルにリクエストしたんですよ。
PandoraHeartsのきせかえツールを新機種対応に
してくださいって。
そしたら、すぐに新機種対応になりました♪
ありがたいー。
今はオズクンとギルが待ち受けで輝きを
放っておりますよ。
なんと、この短時間で一気に第三作目です。
こわいー。私の時間のどこに余裕があるんだー?
 
はい。今回はギリシャ神話から離れて日本歴史風にしてみました。
せっかくギリシャ神話から離れたのに、内容が暗い暗い。
今度こそハッピーエンドを書こうと思っていたのに。
 
やばい。これ書いてるときに、ハイブリッドチャイルド思い出しちゃった。話は違うんですけどね。ちょっと面影あるかもです。
 
最初これは春の設定だったんですが、途中で桔梗は秋の花だったことに気づいて急いで修正をしました。
桜が全て紅葉に植え替えられております。
江戸の街中に紅葉が植わっていたかは疑問ですが。
 
この話の一番大事なものは桔梗です。
お桔の名前も桔梗からとっています。
桔梗の花言葉は『変わらぬ愛、気品、誠実、従順』です。
まあ、なんてステキな花言葉っ!!
まさにお桔ちゃんはそういう子です。
めっちゃいい子。
 
お兄さん助けるために放火だってやむ終えずです。
変わらぬ愛です。兄への。
 
最後に、お兄さんの目の前が真っ赤になったのは、言うまでもなく、お桔ちゃんの血です。
風に乗って散った花びらは、お桔ちゃんが懐にしまっていた桔梗の花びらが散ったものと、冬になって散った、花畑の桔梗を重ね合わせて描写したものです。
こんな所を解説するのは、なんかいけない気がしますが。
泣ける(?)シーンの筈なのに。
 
お桔ちゃんの刑を執行したのは、お兄さんの店の常連客さん。
戦うために刀を研いでたわけではなく、死刑にするために
刀を研いでもらっていたから、毎月来る常連客になっていたわけです。
お桔ちゃんに放火をしろと脅したのはきっとどこかの賊ですね。十五未満だから大丈夫って軽いノリでやらせたんでしょう。
だからお桔ちゃんはお茶をがぶ飲みしなければ死なずに済んだかもしれないです。
話の中での時間設定は、最初の部分は、現在のお兄さんが言っていて、その後はその時その時のお兄さんが語っています。
一番最後は、また最初と同じ時のお兄さんが語っています。
 
 
登場人物
 
お兄さま 名前は不明。たった一人の妹を大事に育ててきた。
別に光源氏のように、育てた女の子を自分の嫁にしようとは思っていないから大丈夫。
 
お桔 純粋で、優しく、笑顔が耐えない十五歳。お兄さんを助けるために、悲しくも命をおとす。可哀想すぎる。
 
常連客 お兄さんの店の常連客さん。実は処刑執行人だった。
 
老人 お桔の罪を裁いた老人。実は優しい。二人がなんとなく可哀想だと思ったから、花畑にも行かせてくれた。
 
 
題名の説明
 
桔梗の花のように。って意味。別にこの後に「風にふかーれてー」と入るわけではないし、TSUTAYAのCMに出てるかっこいい人の曲でもない。
桔梗とお桔ちゃんのことでありますよ。
自分で書いてて悲しくなってきました…。
 
「お兄さまー」
遠くから聞こえてくる呼び声。
「ここに花がございます。美しゅうございますよー」
幼い少女の声が一面の花畑にこだまする。
 嗚呼。
この声を聞いたのは、一体どのくらい前のことだったか。
私には全く思い出せぬ。
一体あれは、いつの事だったか。
あれは、誰だったのか。
思い出せぬのだ。
 
秋の江戸はたくさんの人で賑わいを見せていた。
私と、私の妹である、お桔は二人並び、その紅葉の中を歩いていた。
「お桔。今年の紅葉も美しいなぁ。」
「そうでございますね。」
お桔は柔らかく微笑むと、また紅葉に目を移した。
年の差は十。私が二十五でお桔が十五だ。
私たちの家は、この江戸の町で鍛冶職をしていた。
特に最近はこれといって、目立つ戦いもないためあまり、忙しくなるような仕事がない。
だから、兄弟揃って紅葉の観覧も出来るというわけだ。
 
「お兄さま!あそこに茶屋がありますよ!」
私が違うところを見ていた間にお桔は早くも茶屋を見つけたようだ。
お桔は甘いものが大好きで、今も買ってもらえるかもしれないという期待だけで目が輝いていた。
「はいはい。また団子がほしいんだろう?」
私は懐から銭を出し、茶屋の娘に差し出した。
それと引き換えに皿いっぱいの団子がやってくる。
お桔はそれを口いっぱいに頬張り、嬉しそうに目を薄めた。
 
私にとってお桔は、宝物のような優しい子だった。
嬉しそうなお桔を見ていると、こちらまで嬉しくなってくるようだ。
 
「そういえばお兄さま、お聞きになりましたか?」
「なにをだ。」
私はお桔から貰った団子を頬張りながら尋ねた。
「また江戸の南の方で火事があったそうなのです。今回も出火の原因はわからないとのことで、放火ではないかと言われています。」
「放火は大罪じゃないか。よくそんなことをしようと思うな。」
食べ終わった団子の串を噛みながら、私はお桔の方を見た。
すると、お桔も「そうですね。」とやんわり微笑んだ。
 
今、この江戸では、放火は御法度だった。
火を消すのには大変な時間と労力がかかる。
だから、放火をした者には厳しい罰が与えられていたのである。
 
「お兄さま、私、少し…行ってきます。」
お茶を飲み終えたお桔はお茶を一旦置くと、席を外そうとした。
「なんだ。厠か?」
私がそうきくと、お桔は少しだけ私を睨んで、
「そのようなことは口に出すものではありませんよ。」
と言って、厠に行ってしまった。
そんなに茶を飲んだら行きたくなるに決まっている。
 
戻ってきたお桔と、また二人で町を歩いた。
普通に用を足してきたにしては、お桔の用足しは長かった。
まさか…な。ここは考えないようにした。
それのせいかはわからないが、戻ってきてからというもの、お桔の表情は今にも降りそうな雨雲のように曇っている。
でも、お桔としてはわからないようにしているらしく、やたら元気に振る舞っていた。
何年間一緒に住んでいると思っているのだ。
それくらいの違いは兄にはお見通しだ。
 
家に戻ってくると、常連の客が店の前で立っていた。
「お兄さま、あれ…。」
「まずいな。悪い、お桔。行ってくる。」
私はお桔を家に入れた後に店のある方にまわり、その客の相手をしなければならなかった。
少し待たせすぎたようだ。客の機嫌はあまりよろしくない。
私はその客に茶を出すと、刀を預かり、仕事に取りかかった。
 
両親は、数年前に流行病で亡くなった。
だから、いまは私とお桔の二人だけ。
お桔は女子だから鍛冶職はできない。
つまり、必然的に私が家庭を支えなければならない。
そのための客は大事だ。今回ので大事な客を逃すことになるかもしれんが。
 
空はもう暗く、月さえでている。
仕事をある程度終えて、今日は店を閉まった。
なんとなく眠い気がする。…今日はもう寝よう。明日に備えて。
明日何があるというわけではないが、一応だ。
お桔も眠くなったらしく、もう身支度を整えて布団に入っていた。
「先に休んでおります。…おやすみなさい。お兄さま。」
「ああ。お休み。」
 
私はお桔の頭をなでてから、寝るための身支度を整え、布団に入った。
 
何だろう。先ほどから息苦しい。誰かにずっと呼ばれている気がした。
「お兄さま!起きてください!火事です!!」
お桔のその言葉ではっきりと目が覚めた。
…空が赤い。周りの家も、なにもかも。月さえ真っ赤だ。
「煙がもうこちらまで来ています!早く!」
私はお桔に手を引かれて、何も見えない中を歩いた。
煙が目にしみる。
何故私達の所で火事があったのだろう。
ここは、江戸の東のはずなのに。どちらかというと北寄りの。
私達は火から、逃げて今日立ち寄った茶屋に来ていた。
ここなら大丈夫だろう。たぶん安心だ。
 
「お兄さま、私、少し外の様子を見てきます。お兄さまはここで待っていてください。煙をたくさん吸ったはずですから。」
お桔は咳をしてむせ込んでいた私にそう言った。
「…いい。私が…行く。」
お桔に行かせるわけにはいかない。お桔は女子なのだから。
そう思って立ち上がろうとした。しかし、体は動かず、立ち上がることすらできない。
「いえ。私がいって参ります。お兄さまを行かせるわけにはいきません。」
お桔は微笑むと、茶屋からゆっくりと出て行った。
「…すまないお桔…。」
お桔は「いいんですよ。」とでも言いたげな顔をして一度だけ振り向いた。お桔は微笑むと、また私に背中を向けて外に出て行ってしまった。
 
それから、お桔は一度も家に帰ってこなかった。
何日待っても戻ってくる気配がない。
そもそも、家はすべて燃えてしまった。だから、家の跡に座っていた。それなのに、お桔は帰ってきてくれない。
「茶屋で待っていた方がよかったかもしれんな。」
土の上で胡座をかいて、考える。
すると。
 
「この鍛冶屋の主か?」
頭の上から声が落ちてきた。
「…っだれ…」
「俺は、この江戸の役人だ。お前はここにあった鍛冶屋の主かと訊いているのだ。」
役人…?何で私のところに御上の役人がくるのだ?
「そうだが…。何故…?」
立ち上がった私を見つめ、役人は言った。
 
「お桔はお前の妹だな?」
 
お桔の名前を出されて行かないわけにはいかない。
何故って、私はそのお桔をずっと探していたのだから。
 
私は役人に相当立派な屋敷へと連れてこられた。
そして、座らされる。
「待っておれ。」
役人はそう言って、何処かへ行ってしまった。
広い部屋に独りとは、なんと悲しいことか。
今までお桔がずっと傍にいてくれていたため、尚更だ。
 
半刻ほどすぎた頃に私の目の前の上座に一人の老人が座った。
そして、その横には大柄な男たち。
なにやら不穏な雰囲気を感じ取った私は、軽く前の老人を睨みつけた。
すると、男たちが入ってきた所からまた二人、人が入ってきた。なんと、その人とは。
「お桔!!」
縄で縛られたお桔と、その縄を持った男だった。
お桔は名前を呼ばれると、ふにゃりと微笑んで、また前を向いた。
格好は数日前と変わらないが、顔は窶れ、手足もやせ細っていた。髪も、痩せこけている。
可哀想な格好のお桔は私の横に膝を着かされ、座った。
目の前の老人は、私たち二人を交互に見やると、静かに口を開いた。
「今から、鍛冶屋お桔を放火の罪において裁く。」
私は自分の耳を疑った。
「放火だと…?」
お桔の方を見るが、お桔は前を向いて座ったままだった。
「兄は知らぬのか?自らの妹が江戸の街を放火してまわっていたことを。」
老人は怪訝な顔をしていった。解せないとでも言いたげだ。
「はい。存じておりません。」
お桔は私の方を見ずに答えた。
冗談じゃない。このお桔が、心優しいお桔がそんなことをするはずがない。
そう信じたかった。
「…放火は大罪じゃ。」
「はい。」
「本当ならば、処刑は免れられぬ。じゃがお主はまだ十五の身だ。」
…そうだ。まだお桔は十五じゃないか。
今の決まりでは、十五は年端のいかぬ子供だということで、いくら大罪を犯しても、処刑にならずにすむ。
処刑を受けるのは十六になってからだ。
ほっと胸をなで下ろした時だった。
 
「年端のいかぬ者を処刑するわけにはいかぬ。よって、鍛冶屋。お主が刑を受けろ。」
…なんだって!?
お桔の目が驚愕で大きく見開かれる。
「そんな…!!あんまりにございます!お兄さまは何の関係もございません!!」
お桔は私の前に立ち上がって老人に言った。
そうか。私はお桔の代わりに罰を受けるために連れてこられたのか…!!
「罪人は口を挟むな!!お主はそれほどのことをしたのだ!!」
「しかし、私は…!!」
次の一言で、私は更に地獄に落とされたような感覚に陥った。
 
「私は嘘をつきました!!私は十六にございます!!」
「おい!!お桔…!!」
お桔は老人の前に跪き、頭を垂れた。
「刑は私が謹んでお受け致します!!お兄さまは何の関係も無いのです!!ですから、お兄さまを帰して差し上げてください!」
「お桔!!お前はまだ十五だろう!?刑なら私が受ける!!まだ将来のある優しい娘に、先に逝かせるわけにはいかん!」
お桔に先立たれてはかなわん。
私はお桔に向かって叫んだ。
しかし。もうそれは意味を為さぬ言葉となっていて。
 
「放火をした張本人が名乗りを上げているのだ。これほどやりやすい裁きはない。…これを持ってして、鍛冶屋お桔、御年十六の裁きを終了する。」
…そんな馬鹿な。お桔が、処刑だと…?
 
「刑の執行は、明後日の明朝。心得ておけ。」
老人の重苦しい声が頭の中を蹂躙した。
「…はい。」
そう答えたお桔の小さな体は震えていた。
 
これで最後ならば。これでお桔に会えるのが最後ならば。
私はそう思って、先程の老人の所へ向かった。
私は、どうしても、行きたい場所があったのだ。
昔、お桔と行った花畑。
そこにもう一度だけ行きたかったのだ。
またお桔と一緒に。
 
私は老人に頭を下げて頼んだ。
いくら役人がついてきても構わない。だから最後にお桔と花畑に行かせてくれぬかと。
老人は少し考えてから、頷き、役人を五人従えてならば行ってもよいと言ってくれた。
 
次の日。私たちは広い花畑に立っていた。
お桔は目を輝かせて花を見つめている。
「お兄さまー」
「何だー?」
遠くから呼ばれた声に反応して、私は顔を上げた。
「ここに花がございます。美しゅうございますよー」
私はお桔に手招かれ、その場に行った。
「桔梗だな。」
私がそう言うと、お桔は桔梗を優しく摘んで、それを眺めた。
 
確か、お桔の名の由来はこの花畑に咲いていた桔梗だった筈だ。やはり、お桔には桔梗の可愛らしい花が似合う。
 
すると、お桔は桔梗の茎を指でくるくると回しながら口を開いた。
「何故、お兄さまは私が放火をしたのか、お咎めにならないのですか?」
「訊きたいとは思ったが、まだ信じられなくてな。ききそびれていたのだ。」
私も桔梗の花を見つめる。
 
「では、お話してもよろしいですか?他の誰が信じてくれなくとも、お兄さまには信じていただきたいのです。」
お桔は何かを決心したかのように、小さく頷いた。
そんな風に言われたら聞かないわけにはいかない。
「私は信じてやる。話してみろ。」
私はお桔を元気づけるため、優しく言った。
すると、お桔は嬉しそうに笑い、桔梗を懐にしまってから私の横に腰掛けた。そして、口を開いた。
 
「お兄さまと一緒に茶屋へいった日のことです。席を立って、戻ろうとした私の前に見知らぬ男が立ちました。そして私に言ったのです。『お前は鍛治屋の妹だな?今日の夜更け、家の近所に火をつけろ。そして、今までの南で起こっていた放火も私がやったと自白しろ。さもなければ、お前の兄を殺し、家を潰す。』と。」
「ひどい話だな…。」
私は目を伏せた。
「そして、私はそれを実行しました。お兄さまと家を守るために。まだ十五歳の者が行ったことだから刑を受けずにすむと言われましたので…。」
お桔は悲しげに微笑んで言った。
「もう十六だって言ってしまいましたけどね。」
「本当だ。この間十五になったばかりだというに。」
私はお桔の頭を撫でつつ、続けて言った。
 
「そうしたら、どういうわけか、お兄さまが代わりに刑を受けることになってしまって…。あわてすぎてしまいました。…でも、後悔なんかしてないんですよ。大好きなお兄さまをお守りできたので。」
「お桔…。」
辺りは一面桔梗の花。
もうじき冬がやってくる。
そうしたら、この花たちも散ってしまうのだろうか。
 
「お桔、私はお前とは離れたくない。大切な、たった一人の家族だ。」
「はい。私もお兄さまをお慕いしております。」
 
まだ年端のいかぬ少女が明日でこの世を去ってしまう。
私は彼女の微笑みをまた、もう一度目に焼き付けて。
柔らかな髪をなでた後。
彼女の手を取り、立ち上がった。
徐々に空も暗くなってくる。
今日という日は短かった。
 
明朝。
私は、また役人に呼び出されて、例の場所に向かった。
今日でお桔は逝ってしまう。
そんなことなど、実感出来なかった。
白い着物に身を包んだお桔が館から歩いて出てくる。
しかし、お桔の顔に曇りはなく、いつものように笑顔で。
出かけていた私を迎えてくれる時のような優しい微笑みをして。
庭の中央に膝を着いた。
髪が掴まれ、顔があげられる。
その状態を持ってして、初めて、私はこれからお桔と会えなくなることを実感した。
急激に涙が溢れてくる。
体の震えが止まらない。
 
「お桔…っ!!」
無意識に彼女の名を呼ぶ。
彼女は目だけをこちらに向けて、小さく呟いた。
『行ってきます。お兄さま。』
お桔がそう言うと、彼女の小さな体に不釣り合いな大きな長い太刀を持った男が立った。
その男には見覚えがあった。
いつもの常連客。
そして、いつもの太刀。
お桔と茶屋へいった日に店の前で待っていた、一人と一つ。
 
この男は、処刑を執行するために、毎月私の所に来て刀を研いでいたのか。
 
そして、今日。
私が研いだ太刀で、私の妹が斬られる。
こんな惨いことがあるだろうか。
「嫌だっ!!お桔!!私を独りにするな!!」
がむしゃらに腕を振り回して、お桔の方へ向かう。
何人もの役人が私を捕らえにきた。
しかし、私は抵抗をやめなかった。
涙で殆ど何も見えない中、必死でお桔へ手を伸ばす。
 
あと少しで手が届く。
その瞬間。
私の視界は真っ赤に染まった……。
 
風に乗って、花びらが散ってゆく。
 
「お兄さまー」
遠くから聞こえてくる呼び声。
「ここに花がございます。美しゅうございますよー」
幼い少女の声が一面の花畑にこだまする。
 嗚呼。
この声を聞いたのは、一体どのくらい前のことだったか。
私には全く思い出せぬ。
一体あれは、いつの事だったか。
あれは、誰だったのか。
思い出せぬのだ。
 
ただ、たまに立ち寄る、花畑で咲く桔梗の花が、何故か懐かしく感じる。
可愛らしい花が今日も風に揺られて咲いている。
 
人は私に言う。
悲しみが大きすぎて、記憶を全て失ってしまったのだな。
かわいそうに。
 
私には記憶がない。
昔何をして過ごしていたのかもわからない。
誰と過ごしていたのかもわからない。
しかし、思い出されるものがたった一つ。
 
美しい桔梗の花の中。
幼い少女が微笑んで。
私を呼ぶ。
彼女が誰かはわからない。
彼女の名すらわからない。
顔もよく思い出せない。
 
ただ彼女を愛しいと感じるだけ。
 
私はもう、自らの名すら思い出すことができない。
 
Fin
はい!!来ました第二作目です!
出だしが怖いっ!!
この話もギリシャ神話に基づいて、というか、神様の名前を拝借したにすぎないのですが、話を書いております。
名前だけ出てきたユーリー氏は、ボーアのもとで研究をしていた人で、そして、1934年にノーベル化学賞に輝いた人です。
こちらも名前を拝借しただけで、本人との関連性は全くありません。
 
ヴィンスは、ただ使ってみたかった名前なだけです。
というより、ほんとはヴィンセントさんなんですよ。
それなのに、本名を出すきっかけがなくて、そのままヴィンスになってしまいました。
なんてこったい。
クロトは運命の糸を紡ぐ女神さんの名前です。
 
クロノスは…ま、いっか。
 
で、二人の関係は仕事の同僚です、
ヴィンスの方が知識が豊富で仕事に真面目です。
クロトは、ヴィンス一人だと話がひたすら怖いだけなので、
柔らかい、おちゃらけた人物が欲しいと思って付け足しただけです。
だから内容上で仕事らしい仕事をしているのはヴィンスだけなんですよ。
 
ちなみに二人の服装は、黒のコートなのですが、
これは仕事着です。一応死神さん設定なんで。
 
何で元素記号でかかれていたのかというと、ちょうどその時
化学の勉強で元素とかをやっていたからです。
なんでも思いつきだけで書こうとするから、話がぐだぐだなんですね。
反省です。
 
授業中にぼーっとしてたら、ふっと話が浮かぶんですよ。
まず出だしからなんですが。
出だしが浮かんだら、とにかくラストを決めます。
今回はあやふやなまま終わらせようと思ったのであんな終わり方をしてます。
 
登場人物
 
ヴィンス 本名ヴィンセント。クールで頭がまわる。完璧な人物。私の中のイメージとしては、PandoraHeartsのギルバート。のヘタレを完全に取り去ったバージョン。…そんなのギルじゃない…。
 
クロト ボケボケ。一応仕事はしている。カードを置いてきたヴィンスに対して怒ってるから。最初はいなかったはずのキャラ。出たばかりの頃は、しっかりした人物にしようと思ってたのに…。
 
題名の説明
 
二人の仕事を言い換えたもの。特に深い意味はない。
 
 
実は、魔王の寿命は一万歳という設定ですが、見た目は人間に比例します。
この話では、人間の百年を魔王の一万年としています。
というわけで、ガイアの二千歳の誕生日は人間でいう、成人に値するわけです。
今回の話である、地肉祭は元々、使用人だったフォンヴォールが、ガイアに。
魔王タナトスがガイアに命名されてフォンヴォールになっています。
ガイアにあった、神殿の記憶はタナトスが記憶の封印に失敗した際に漏れ出した記憶が
たまたまガイアに入ってしまったものです。

という、内容説明はおいといて。
この話は、二回読むと「ああ。なるほどなぁ。」となるように構成されています。
偽物フォンヴォールの仕草がやたらと丁寧で優雅だったり。
フォンヴォールが黒薔薇の区画にたおれていたり。
フォンヴォールがタナトスである証明が出来るようになっているのです。

逆にガイアの行動は喋り方は魔王のようですが、行動、心のバランス共に魔王に相応しくない行動をとらせてあります。

フォンヴォールは自信に満ち、いつも堂々としている筈です。
もう一度読んでみたら、また違う見方が出来るかもしれません。


登場人物

ガイア=フォンヴォール 主人公。千年前はなんでもない城の使用人だった。
しかし、みんなの記憶が消されてから、魔王に相応しいとされている
黒髪と黒い瞳を持つことから、新しく魔王にされた。
タナトスにつけていたフォンヴォールは、実は昔の自分の名前だった。

フォンヴォール=タナトス ガイアの従者として登場。しかし、実はこちらが本物の魔王だった。
死の神タナトスの名が嫌いだったため、自らの名を、
誰も来ない城の神殿の奥深くに文字と数列で封印した。
従者のときの言動も、なんとなく魔王っぽい気品があふれたものとなっている。


題名の説明

封印が解かれるという、お祭のときに、神殿の中に血と肉が散乱していたことから。
そして、その血肉が散っている様子を、祭のようだという、二つの意味をこめて、『血肉祭』。

 

路地裏に広がる鉄の匂い。
流れ出す赤い液体。
なまめかしい音と悲痛な叫び声。
そこはもう、廃墟と化していた。
壁に描かれた文字さえも赤黒く、夜の月に照らされている。
そこには一言だけ。
『CRONUS』
 
「神にでもなったつもりか?」
男は血塗られた壁をザラリと撫で、そう呟いた。
「ギリシャの神、クロノス。神話の中ではあまり良い印象は与えてはいないが…。」
男は、しゃがみ込むとその場に落ちていた何かを見つめる。
「父、ウラノスを倒し、つかの間の英雄となったが、最終的にはまた自らの子を飲み込む始末。…全く手に負えん。」
漆黒のコートを翻して、男は路地裏からゆっくりと歩いて出て行った。
 
残されたのは、たった一枚のカード。
『Ⅶ』
先ほどの男が見つめていたものは、これだったのだ。
 
「おーい。ヴィンスー。カードどこやったんだよー?」
「置いてきた。」
「置いてきたぁ!?なに考えてんだよ!!あれないと、ヤードに報告しても取り合ってくれねぇよ!」
茶髪の男が黒髪の男に噛みつくように言った。
黒髪の男は昨日路地裏で死体を前に立っていた男だ。
「ヤードに手柄を横取りされるのが嫌だったんだ。」
「じゃあ置いてくるな!!」
ヴィンスと呼ばれた黒髪の男は茶髪の男から目をそらした。
明らかに五月蠅いなぁとでも言いたげだ。
「そんなに欲しいんだったら、お前が取ってくればいいだろう?クロト。」
茶髪の男、クロトはぎろりとヴィンスを睨むと言い放った。
「もうヤードに見つかっちまったよ!!俺の仕事が全部水の泡だよ!!どうしてくれんだ、コノヤロー!!」
すると、クロトは頭を抱えて座っていた椅子にうずくまってしまったのだった。
 
彼らの仕事は、死者の弔い。
そのための死亡時の捜査。
死者を弔うためには、まず、その人物がどのように死んだか。
それを知る必要がある。
そしてその者たちを、その人物に見合った場所へと連れて行くのだ。
つまりは、死神というわけだ。
 
そして、ヴィンスとクロトがいるのは、他殺されてしまった人物の取り締まりを行う部署。
主な仕事は弔いよりも、殺人現場の捜査だった。
敵は、人間のヤードたち。
彼らに、必要な証拠品をかすめられたら、もうどうしようもない。
しかし、こちらが証拠品を握ってしまえば、ヤードの協力すらあおぐことが出来るというわけだ。
 
そして、今回の重要な証拠品だったのが『Ⅶ』と書かれたカードだったのだ。
「そんな大事なものをよくも置いてきてくれたな…。」
「あんなもの、必要ない。ただの数字の書かれたカードにすぎん。」
ヴィンスはあくまでも冷静に言う。
「困るんだよ!!今までのこの殺人事件で落ちていたカードには規則性が無いんだ!!Ⅵがまだ何なのかわからない以上、持ち帰ってくるのは当たり前だろ!?」
「覚えればいいんだ。あんなもの。最初が6、次が37、その次が8、そして7だ。」
「全く法則性がつかめないじゃないか!どうなっているんだ!!」
クロトは、あー!!っと叫ぶと、自分の足に顔を埋めた。
「癇癪をおこすな。俺はもうすぐ分かりそうだ。」
「は?」
ヴィンスはふんと鼻で笑うとカツカツと靴の音を部屋いっぱいに響かせながら歩き、言った。
 
「これは俺の憶測だが、残りの死者はあと二人。そしてカードの数字は92と16だ。」
ヴィンスは部屋から出ると、また再び夜の街に消えていった。
闇と同化するように。ゆっくりと。
黒衣をはためかせて。
 
「なんだよぅ。教えてくれたっていいじゃないかよー。」
クロトは悲しそうにヴィンスの背中を眺めていた。
 
数日後、ヴィンスはまた違う路地裏に立っていた。
足下には幼い子供の死体とカード。
壁には『CRONUS』。
「大当たりだな。やはり92だ。」
血濡れたカードには『Ⅸ Ⅱ』 と書かれている。
ヴィンスはカードを裏返し、なにやらカードの匂いを嗅いでいた。
「ヴィンスー。なにしてんのー。」
今回はクロトも同行している。
 
「やはりな。臭い。」
「当たり前だ。バカだ。お前は。」
クロトはヴィンスを見て溜め息をついた。しかし。
「違う。血の匂いが臭いとか、そういうことを言っているわけではない。薬品臭いんだ。」
「は?薬品?」
クロトも嫌々ながらカードの匂いをかぐ。
しかし、よくわからなかった。血の鉄のにおいの方が明らかに強い。
 
「わ、わからない…。」
「鼻が曲がってついてるんじゃないか?」
「そんなわけがあるかよ。」
クロトがヴィンスの背中につっこんだ。しかし、ヴィンスはこれといった反応を見せてはくれなかった。つまらない男だ。
 
「犯人が一人に特定できた。」
「へー。…え!?誰だ!?」
ヴィンスはカードを放り投げると、クロトを振り向いて言った。
 
「ユーリー氏。」
「え…。」
 
だれそれ。クロトがそう言う前にヴィンスが補足説明をし始めた。
「彼は化学者で、つい先日、生まれたばかりの自分の子を亡くしている。多分その腹いせだろう。身近な子供を手に掛けた。カードは、周期表の元素番号。それでCRONUSと順番にかかれていた。しかし、Rは元素番号にはないため、最初の文字がRのものを使ったというわけだ。」
「な、なるほど。」
明らかに納得仕切れていない顔でクロトが頷いた。
「まったく…。元素番号を使うなど、自分が犯人だと露呈しているようなものだ。この町で化学者はユーリー氏しかいないのだから。」
「そ…そーなのか。」
そして、ヴィンスは、クロトに向かって質問を投げかけた。
その時のヴィンスの目はあまり意欲的なものには見えなかったのだが。
「では、なぜ俺がカードの匂いを嗅いでいたかわかるか?」
それはさすがにわかる。とでもいいたげにクロトは胸を張って言った。
「化学者だってことを確認するためだ。」
すると、ヴィンスは一度流した目をもう一度戻して言った。
「それもあるが、この事件の犯人を特定するためだ。ユーリー氏が用いている薬品かどうかを調べていた。彼が使うのはこの土地にしか生息しない植物だ。それを使うのも彼しかいない。」
「お、おう。」
ヴィンスは持っていたカードを投げて、路地裏から出て行く。
クロトは一応それに従ってヴィンスについて行った。
 
「今からユーリー氏も捕らえに行く。彼も死亡者リストに載っている。…行くぞ。」
ヴィンスがそう言うと、クロトは軽く頷いて、
二人はまた再び闇の中に消えていったのだった。
 
Fin
 
深淵の底に広がりし、黒々しい闇。
そこに広がるは、毒々しい文字。数列。
それらを読み解いて初めて明かされるその言葉の意味。
それは。

誰がこの名を人に教えたいと思うだろうか。
死の神、タナトス。
その名をつけたのは他でもなく母だった。
タナトスのように、麗しく、輝かしく。
俺はこの名が嫌で嫌でたまらなかった。
だから、隠した。
誰にもわからぬように。見られぬように。
誰も訪れぬ深い深淵の底。
毒々しい文字と数列で。
隠したのだ。
その名と、タナトスにはえた悲しき翼を。
タナトスは…滅びたのだ。

「お目覚めください。そろそろ式の時間ですよ。」
俺はその声に反応してゆっくりと頭を上げた。
「…ああ。そうだな。あの場所に行くのは気が進まないのだが。」
俺は頭を押さえて、そう答える。横からローブがかけられ、俺の寝ぼけた目はそいつを捕らえた。
金の髪に深い青の瞳。こいつは、俺の従者だ。ずっと、何年も俺の側にいる。…もうかれこれ、百年になるのではないだろうか。

彼の名は、フォンヴォール。
俺がつけた。こいつ、フォンヴォールは百年近く前に俺の城の黒薔薇の区画に倒れていた。
ゆっくりと起き上がったそいつは、痛そうに頭を押さえてから俺に向かってはにかんだ。
こんな所に人が倒れているのなど、初めて見たのだ。
俺は側にいた男にフォンヴォールを運ばせ、傷の手当をさせた。

その時に聞いた話によると、フォンヴォールには記憶がないらしい。
…俺と同じだ。俺にも断片的な記憶しかない。
暗い闇。見たことのない文字と数列。
これだけが、俺の記憶に残っている。
何なのかもわからない。だが、とてつもなく不快な物だというのはわかった。

そして、俺の従者となったフォンヴォールは助けてくれた礼と、感謝の気持ちをもってして本日も俺の傍にいるというわけだ。

「フォンヴォール。俺の代わりに式に出てこい。俺は今日は行かない。」
俺はフォンヴォールの顔を見つつ、言った。
「ふふっ…。駄目ですよ。王家の者でない者が式なんかに出たら、国辱です。私が、ガイア様の母上に怒られてしまいますよ。…それに、今日は、ではなく今日も、でしょう?」
俺は反発して言い返す。
「母上は関係ない。この国で一番偉いのはこの俺だ!我が国の王はこの俺なのだ!」
フォンヴォールは苦笑すると、柔らかな動作で俺のベッドに手を乗せた。

「だったらなおのことです。国王が国王の為の式に出なくてどうします?ガイア様。」
フォンヴォールはそう言うと優雅に笑い、そっとベットから手を離した。

「それでは、下でお待ちしてますよ。」
彼は深々とお辞儀をすると、シルクのローブをはためかせて部屋から出て行ってしまった。俺は、はあっとため息をつくと、肩にかけられたローブを肩から外して袖に腕を通した。

俺は王だ。
しかし、ただの王ではない。
魔の。
邪の。
悪の。
王だ。
つまりは、魔王。
寿命は一万年。そして今日が記念すべき俺の二千歳の誕生日だった。
俺の名は、ガイア。
大地の神ガイア。由来はそこだ。
ガイアのように麗しく、輝かしく。
俺はこの名が、好きだった。

「来ましたか。」
フォンヴォールは微笑むと俺の横に立つ。
そして、ローブに黒薔薇をさした。
「……なんだこれは。」
俺は訝しげに薔薇を見つめた。
「黒薔薇は魔王の象徴でしょう?せっかく、国が総出で祝ってくれるのです。つけておいて、悪く思う人などいませんよ。」
「俺は祝ってくれなどとは言っていない。それに、魔族を良く思わない輩もいる。…俺には公になってはいないが、記憶が殆どないのだ。そのような魔王を魔王と認める者など…。」
俺は声のトーンを落として言った。すると、フォンヴォールは対照的に自信に満ちた声で言ったのだ。
「何を言ってらっしゃるんですか。あなたは私を救ってくださった。それは変わらないでしょう?私はあなたに感謝しています。私はあなただけは裏切りませんよ。」
「ヴォール…。…それは、俺がお前を裏切ってもか?」
「ええ。私はあなたに忠誠を誓ったのです。例え、何が在ろうとも私はあなたと離れる気はございません。」
眩しい。この男の自信が。
同じように記憶を無くしているのにも関わらず。
何故こいつはこんなにも、自信に溢れている?

「さあ、そろそろ行かなければ。ガイア様の母上もお怒りになりますよ。」
「…そうだな。行くのだとしたら、出来れば俺も母上の逆鱗には触れたくない。」
俺は、黒薔薇に一度目線を向けてから、正面を見た。

そこはいつもは閉められている神殿だ。
俺の誕生日にのみ開けられるこの神殿。俺はこの神殿が嫌いだった。何故かはわからない。ただ、俺の本能がここに寄るなと叫んでいるのだ。

「さあ。入りましょう。」
フォンヴォールが取っ手に手をかけた。

そして、目を見張った。
「あ…っ!?」
神殿の中には、おびただしい量の血。
おびただしい量の骸。
「な、なんだこれは…!?」
「みんな…死んでいるようですね…。」
フォンヴォールは、口を覆いながら言った。
「何が起こっているのだ!?」
「ガイア様!!あれを!!」
俺が顔を上げるとそこには、俺の記憶の断片と合致する、
毒々しい文字と数列。深い闇。

「ああ…っ。これは…。」
俺は、力の入らなくなった足を引きずって、そちらに進んだ。
これは、俺の…。私の…。本当の。

頭痛が酷い。
頭が割れそうだ。
昔の記憶が、古い順番に戻ってくる。
そして、最後に戻ってきた記憶は。

「タナトス…。」

横で聞こえた声に振り向いた。
そこには、驚いた顔をしたフォンヴォールがいた。
「え…」
「この文字…この数式…この場所。これは…。知っている。何もかも。もう時がきたのだ。既にあれから千年がたつ。」
「何を言っているのだ、ヴォール!?」
フォンヴォールは、更に奥へ進む。

「『誰がこの名を人に教えたいと思うだろうか。
死の神、タナトス。その名をつけたのは他でもなく母だった。
タナトスのように、麗しく、輝かしく。
俺はこの名が嫌で嫌でたまらなかった。
だから、隠した。
誰にもわからぬように。見られぬように。
誰も訪れぬ深い深淵の底。
毒々しい文字と数列で。
隠したのだ。その名と、タナトスにはえた悲しき翼を。
タナトスは…滅びたのだ。』そう…書いてあります。こんなにも複雑な文字と数列。それなのに、なぜ私が読めるのだと思いますか?」
フォンヴォールは下を向いたまま言った。

「あれは、私が書いた、私の墓です。」
「何を言っているのだ!?あれは、俺の、タナトスの…!!」
「いいえ。私のものです。私が…昔は魔王だった…。」
フォンヴォールが立ち上がった。金の髪を揺らして。

「私は、タナトス。母上から貰った名を破り捨てたのは…私です。」
「ヴォール…」
「記憶から名前を思い出すのを恐れた私は、昔の記憶ごと全てを破り捨て、ここに封印しました。この文字と数列で。記憶をなくした魔王は、黒薔薇の前で目を覚ましました。何がどうなってそこで目を覚ましたのかはわかりませんが…。黒薔薇は魔王の象徴でしょう?」
「しかし、それでは何故俺にも記憶がなかったのだ!?」
俺は、フォンヴォールに言った。何がどうなってるのかわからなかった。

「それは…私が周りの人達からも私の名前が思い出されることが無いように、この世界の全ての人々の記憶を消したからです。…実は、記憶が無かったのはガイア様だけではないのです。この世界の人々の中には千年より前の記憶はありませんでした。」
「そんな…」
俺は、絶句した。
「全ての人々から記憶を消すのは容易ではありません。だから、私は目を覚ますまでに九百年の月日を要してしまった。ガイア様にあった、ここの記憶は、きっと、私の記憶が漏れてしまったものでしょう。
そして、記憶が無くなった人々はどうしたと思います?
そう。記憶が無いことを悟られないようにするため、疑似の家族や、疑似の友を作ったのです。
一人にならないように、知らない子供に声をかけて、自分の子にする母。そして、今まで知らなかった人物と昔から友達だったかのように互いに振る舞おうとする人間たち。
穴のあいた魔王の座を埋めようとする大臣たち。
そして、選ばれたのがあなただ。」
フォンヴォールは振り返った。

「だって、おかしいと思いませんか?なんであなたは記憶にないのに、魔王になっているのでしょうね?」

頭の中が凍り付く。
そうだ。何で、俺は魔王になっているのだろう。
だって、俺は、ただの『使用人』でしかなかった筈なのに。
『フォンヴォール』は、俺の名であった筈なのに!

「あ…ああ…!!」
「そろそろ、みんなの記憶が戻ります。…みんな、自分たちの在ったはずの場所に帰ろうと、帰そうとするでしょうね。」


これは何の悪夢だろうか。
これは何の仕打ちだろうか。


これは、死の神、タナトスの名を嫌った魔王の気まぐれなお伽話。

Fin
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HN:
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